地球と人に優しい暮らし
脱炭素を推進するため、断熱リフォームを含めた快適な省エネ住宅化への関心が高まっている。木を育てて使う循環型の家づくりや、太陽光など再生可能エネルギーの活用も、地球と人に優しい暮らし実現に向けた大きなテーマの一つだ。
木の住まい普及へ

地元の木を使い、住む人にも環境にも優しい家づくりを―。木情住宅は住まいとしての快適性や安心感に加え、環境への貢献度も高い。鳥取県内では、県産材を使った木造住宅を普及、推進するための官民の取り組みが進む。
林野庁の「森林・林業白書」によると2022年の新設住宅着工戸数に占める木造住宅の割合(木造率)は55.6%。うち一戸建て住宅では90.9%と高いものの、最も普及している木造軸組工法(在来工法)の住宅での国産材の使用割合は5割程度にとどまる。
木造住宅は、優れた通気性や調湿機能、設計の自由度の高さなどのメリットがあるほか、内装に木を使うことでリラックス効果も得られる。環境面でも、木材は他の素材に比べ製造時のエネルギー消費が少なく、二酸化炭素(CO₂)の排出削減につながる。
地元の木材を使えば気候風土に合った家づくりができるだけでなく、輸送に伴うCO₂排出量の抑制や森林環境の整備、林業などの産業活性化にも貢献する。鳥取県は県産材を使って木造住宅を新築、改修する人に建設費用の一部を助成する「とっとり住まいる支援事業」を実施。県住宅政策課によると、新築住宅のうち約4割が事業を利用しており、県産材の活用を後押ししている。
県内の工務店などでつくる県木造住宅推進協議会は「木の住まいフェア」などのイベントや会員向けの研修会を通じ、木造住宅に関する広報・啓発活動や人材育成に努める。同協議会の音田猛理事は「木造住宅は、確かな技術で建ててきちんと管理すれば、長く住むことができる。業界全体で造り手のレベルアップを図りつつ、住まい手にもメンテナンス方法や魅力を伝えていくことが重要」と話す。
同協議会が米子高専(米子市彦名町)と連携して取り組む「環境共生型ものづくりデザイン教育」は、今年で20年目を迎えた。毎年、建築を学ぶ学生が、林業体験や間伐材を使ったものづくりを通し、木の特性や使い方を学んでいる。音田理事は「自分の目で見て、体で覚えることで、新しいアイデアが生まれる。次世代にこの地域の豊かな自然を引き継ぐためにも、木を生かした循環型の家づくりを推進したい」と力を込める。
(2024年5月30日付「とりeco最前線2024」参照)